『BATMAN』の世界は実に不可思議で、非常に意図的なアンバランスさがあるように思える。
中でも、魅力ある敵が『BATMAN』の世界をより引き立てている。
普通なら主人公が「光」で、敵が「闇」だろう。闇が暗ければ暗いほど光が強く見えるように、ヒーローのヒーローたる姿をより克明に印象付けるのだ。
しかし、『BATMAN』では逆なのである。
主人公は心に深い闇を持っており――それを画面上にも投影している――、対する悪役たちはエキセントリックでインパクトが強い。原色を多用し、闇の中に”浮き出させる”ような衣装である。
ただし、悪役には悪役として当然、然るべき「闇」や「影」を持っていて、T.バートンは奇妙な怪人怪人たちの中に影や闇を――先に述べたような「光」と「闇」の作用を利用して――強烈に引き出している。
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![]() ベッキーを捕えたジョーカー (『BATMAN』より) |
『BATMAN』に登場するキャラクターは、道化師の性質を持っていると私は思う。
強烈なインパクトと色の主張、奇想天外な行動と共に、どこかしら悲哀を感じずにはいられない。コメディタッチで描かれていても、T.バートンが映画で主張したように、多くの作家が描いたBATMANシリーズのシリアスストーリーに、そう言った悲哀を織り込んでいるのは元々キャラクターにそう言った性質があったからではないだろうか。
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![]() トミー・リー・ジョーンズ演ずる トゥー・フェイス (『BATMAN FOREVER』より) |
リドラーは、毒々しい赤を基調としたトゥーフェイスに対し、ケバケバしい蛍光黄緑が基調にされた衣装。しかも、全身タイツ。
元からエキセントリックな性格だったので、変貌したらそれが前面に出てきたようだ。ジム・キャリーのはちゃめちゃな弾けっぷりと見事にマッチした、「危ない人」と言う感じ。ちなみに原作通りである('69年映画「バットマン」ではハテナ一つだったが、今回は全身にプリント)。
彼は三度、衣装替えするが、基本は黄緑とハテナ。「ナゾナゾ大好きだゼ〜!」と自己主張し過ぎ。そう、自己顕示欲の塊であるリドラーの性格も出ている。
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![]() 資金稼ぎで宝石店を強盗するリドラー、トゥー・フェイスとその一味。 (『BATMAN FOREVER』) |